「知ってるつもりキリスト教」⑤ 「イエス・キリスト」

    日本語で欧米人の名前を書く時、私の本名のレナト・フィリピーニのように、名前と姓の間に「・」が表記されます。しかし、イエス・キリストの場合、「イエス」が名前で「キリスト」が姓という意味ではありません。「キリスト」はヘブライ語の「メシア」をギリシャ語で表した形であり、本来の意味は「油を注がれた者」なので、キリストは固有名詞ではないのです。

     旧約聖書では、「油を注がれた者」とは王や祭司、そして預言者に対して用いる言葉でした。その後、民を圧政から解放し、救いに導く指導者を表すように変化していったのです。新約聖書の時代、「メシア」という概念は期待に満ちたものであり、政治的・社会的な救い主というイメージが強かったようです。特に、ローマ帝国からイスラエルを解放し、王国を再建してくださる栄光の救い主への期待が高かったのです。

       そして初期のキリスト教徒は、十字架上で処刑されたイエスこそ神の子であり、救い主メシア、すなわち「キリスト」であると確信したのです。それから、イエス・キリストとは「救い主イエス」という意味で、信仰を簡潔に告白する言葉となったのです。

     宮越俊光著 『早わかりキリスト教』(日本実業出版社、2005年)参照

 ***写真はロペス神父(聖ザべリオ宣教会会員)の提供

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