「知ってるつもりキリスト教」⑩ 奇跡の背景にある神の愛

   福音書に記されたイエスの奇跡は事実なのでしょうか。この疑問に簡単には答えられませんが、おそらく物語の土台となった何らかの出来事があったのは間違いないでしょう。ただし、すべてが福音書に記されたとおりであったかどうかを知ることはできません。イエスが奇跡を通して本当に伝えたかったことは、神の到来であり、また神の愛が広まっているということでした。武力や権力で世界を支配するのではなく、愛といつくしみによって世界に愛を広める方が神である、ということを伝えようとしました。そしてこの神の愛を信じ、受け入れるかどうかが、奇跡の物語を通して問いかけられているのです。

   イエスは、自分を信じさせようとするために奇跡を行ったわけではありません。私たちは目先の出来事だけに心を奪われてしまい、いつの間にか奇跡だけを信じることがあります。

   イエスはこのような人間の心をよく知っていたようで、病気がいやされた人々には「自分のことを言いふらさないように」と注意をしています(マタイ12・16)。イエスの奇跡は、何よりもまず信仰の目によってとらえられることなのです。

 宮越俊光著 『早わかりキリスト教』(日本実業出版社、2005年)参照

***写真はロペス神父(聖ザべリオ宣教会会員)の提供。

f:id:nipponblog:20180802202635j:plain