聖書に登場するシンボル 「捧げ物・血・いけにえ」

    どの文化圏に属する宗教でも、神や霊などに「捧げ物」をする習慣があります。神などに何かを差し上げる代わりに、特別のお恵みやおゆるし、ご加護などを乞うことでした。日本のような農耕文化では米、酒、果実でしたし、家畜牧畜の文化では動物でした。特に動物の血は命そのものであったため、一番ふさわしいお返しでした。

     聖書の背景は牧畜を生業とする世界で、動物を殺すことがある意味で、日常の出来事でした。聖書の世界の人々にとって家畜や羊などの肉は、欠くことのできない大切な食料なのです。その上に、「血は命」という考えがありました。血を流すと生き物が死にますので、血こそ命の源だと思っていました。さらに、命は神からいただいた恵みなので、血は特別に神に属するものでした。

     人間は常に罪を犯しているので、それだけ神に対する負債、恩義がたまってきます。昔の人はいけにえ、つまり動物の血を流すことによって、その負債を返しました。それが「あがない」というものです。旧約時代では特に小羊のいけにえがそうでしたが、新約時代では、神の小羊であるキリストご自身が血を流すことによって、人間の神に対するすべての負債をあがなってくださったのです。

 マンフレート(著)/池田 紘一(訳)『聖書象徴辞典』人文書院 参照。

***写真は高木淳さんの提供。アルバムのリンク先 

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