奇跡に関する物語は福音書にたびたび登場しますが、自然科学が発達した現代人の立場からすると、「そのようなことができるものか」と首をかしげたくなるような出来事が記されています。なぜイエスはこのような不思議なわざを行ったのでしょうか。
福音書に記された奇跡物語を読む時に留意すべきことは、不思議なわざの真偽を追求することよりも、その奇跡が行われた背景やなぜその奇跡が行われたのか、そしてその奇跡を通して何を伝えようとしているのかに目を向けることです。
福音書は、イエスの細かな一つ一つの動作や行動を描写しようとした記録ではありません。福音書は信仰の書であり、それを記した人々の信仰が土台にあることを忘れてはなりません。また、他の書物と同様に福音書の記述には、書かれた時代の状況やものの見方やとらえ方が反映されています。21世紀に生きる私たちの立場からだけで理解しようとすると、理解しがたいことが記されているということも踏まえておかなければならないのです。
宮越俊光著 『早わかりキリスト教』(日本実業出版社、2005年)参照
***写真はロペス神父(聖ザべリオ宣教会会員)の提供